介護保険はいつから使える?申請方法と認定の流れを60代向けにやさしく解説

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介護保険料は40歳から給与や年金から天引きされています。「払っているのはわかっているけれど、実際にどう使うのか」——正直なところ、申請の仕組みについてはほとんど知りませんでした。でも60代になり、自分自身の老後や介護が以前よりずっと身近な問題として感じられるようになってきました。「いざとなったときに慌てないよう、今のうちに仕組みを知っておきたい」という気持ちから、この記事をまとめました。介護保険の基本から申請の流れ、使えるサービスまで、同じように「払ってはいるけれど詳しくはわからない」という方に向けてわかりやすく解説します。

介護保険とは?基本的な仕組みをおさらい

介護保険は、介護が必要になったときにその費用の一部を公的に負担してくれる制度です。2000年にスタートし、40歳以上の全員が加入しています。保険料を納めた期間に応じてサービスを受けられるわけではなく、「要介護認定」を受けた後に初めてサービスを利用できる仕組みです。なお、保険料を滞納した期間がある場合は、給付が一時的に制限されることがあります。

被保険者は2種類

介護保険の加入者(被保険者)は、年齢によって2つに分かれています。

  第1号被保険者 第2号被保険者
対象年齢 65歳以上 40歳以上65歳未満
保険料の納め方 年金から天引き(原則)※ 健康保険料に上乗せして納付
サービスを受けられる条件 要介護・要支援と認定された場合 老化が原因の16種の特定疾病により要介護・要支援となった場合

※年金の年額が18万円未満の場合は、年金天引きではなく個別に納付する形になります。

60代の方は第1号被保険者として、原則として年金から保険料が天引きされています。2024〜2026年度(第9期)の全国平均は月額6,225円ですが、実際の保険料は市区町村ごとに異なります(厚生労働省「第9期介護保険事業計画期間における介護保険の第1号保険料」より)。

参考:厚生労働省「介護保険制度について」

介護保険サービスを使うために必要な「要介護認定」とは

介護保険のサービスを利用するためには、まず「要介護認定」を受ける必要があります。これは「どの程度の介護が必要か」を市区町村が判定する手続きです。認定結果は要支援1・2、要介護1〜5の7段階に分かれており、段階によって利用できるサービスの種類と量が変わります。

区分 状態の目安 月の支給限度額(目安)
要支援1 日常生活はほぼ自立。一部支援が必要 約50,320円
要支援2 立ち上がりなどに支えが必要な場合がある 約105,310円
要介護1 歩行や立ち上がりに不安定さがある 約167,650円
要介護2 日常的に一部介護が必要 約197,050円
要介護3 ほぼ全面的な介護が必要 約270,480円
要介護4 全面的な介護が必要 約309,380円
要介護5 介護なしでは日常生活が困難 約362,170円

※支給限度額はあくまで目安です。実際の限度額は地域によって異なります。限度額の範囲内でサービスを利用した場合、費用の1〜3割が自己負担となります。限度額を超えた分は全額自己負担です。

要介護認定の申請から認定まで、5つのステップ

「申請してから認定まで、何をすればいいのかわからない」という方のために、流れをわかりやすく整理しました。

ステップ① 市区町村の窓口またはケアマネジャーに相談・申請

まず、お住まいの市区町村の窓口(「介護保険課」「高齢者支援課」など自治体によって名称が異なります)か、地域包括支援センターに相談・申請します。申請書は窓口でもらえるほか、多くの自治体でインターネットからダウンロードすることも可能です。

本人が窓口に行けない場合は、家族が代理で申請できます。地域包括支援センターや居宅介護支援事業所のケアマネジャーに代行してもらうことも可能です。

申請に必要な書類(一般的なもの)

  • 要介護(要支援)認定申請書
  • 介護保険被保険者証(65歳になると自治体から郵送されます)
  • マイナンバーカードまたはマイナンバー通知カード
  • 身分証明書(運転免許証など)

※必要書類は自治体によって異なることがあります。事前に窓口に確認すると安心です。

ステップ② 認定調査(訪問調査)

申請後、市区町村の職員またはケアマネジャーが自宅を訪問し、心身の状態について聞き取り調査(認定調査)を行います。全国共通の74項目にわたる調査で、日常生活でできること・できないことを確認します。

このとき、家族が立ち会うことが非常に重要です。本人は「できる」と答えがちですが、日頃の様子や困りごとを家族が補足することで、実態に近い認定結果につながります。「本人の話だけでは実際より軽い判定になってしまった」というケースは少なくありません。

ステップ③ 主治医意見書の作成

市区町村がかかりつけ医に対して、意見書の作成を依頼します。申請者が意見書の作成を依頼するのではなく、市区町村から直接医師に依頼される仕組みです。意見書の作成費用は申請者の負担にはなりません。かかりつけ医がいない場合は、市区町村が指定する医師の診察が必要になります。

ステップ④ 一次判定・二次判定(審査)

認定調査の結果がコンピューターで分析され、一次判定が行われます。その後、医師・看護師・社会福祉士などの専門家で構成される「介護認定審査会」が主治医意見書と合わせて審査し、最終的な要介護度(二次判定)が決定されます。

ステップ⑤ 認定結果の通知

申請からおおむね30日以内に、認定結果が郵送で届きます。ただし、調査員やかかりつけ医の日程調整が難航したり、都市部などで申請が集中している場合は2か月程度かかることもあります。急ぎでサービスが必要な場合は、申請と同時に地域包括支援センターや居宅介護支援事業所に相談しておくと安心です。

認定結果には有効期間が設けられています。新規申請の場合は原則6か月(3〜12か月の範囲で設定)、更新の場合は原則12か月(最大48か月)です。有効期間が切れると介護サービスが利用できなくなるため、満了の60日前から更新申請ができます。忘れずに手続きをしましょう。

なお、認定に納得できない場合は、都道府県の「介護保険審査会」に不服申し立てをすることができます。

認定後の流れ:ケアプランを作ってサービス開始

要介護認定を受けた後、すぐにサービスが始まるわけではありません。次のような流れでサービス利用が始まります。

ケアプランの作成

「どのサービスをいつ・どれだけ利用するか」を決める計画書をケアプランといいます。要介護1〜5の方は居宅介護支援事業所のケアマネジャーに、要支援1・2の方は地域包括支援センターに依頼してケアプランを作成してもらいます。ケアプランの作成費用は介護保険で全額がまかなわれるため、利用者の自己負担はありません。自分でゼロから考える必要はなく、ケアマネジャーに相談しながら進めることができます。

サービス事業者との契約・利用開始

ケアプランができたら、サービスを提供する事業者と契約を結び、サービスの利用が始まります。利用した費用のうち1〜3割が自己負担となります。なお、介護保険の効力は申請日にさかのぼって発生します。そのため認定結果が出る前にサービスを利用した場合でも、後から保険が適用されます(ただし認定されなかった場合は全額自己負担となります)。

介護保険で使えるサービスの種類

介護保険で利用できるサービスは大きく「在宅サービス」と「施設サービス」に分かれます。

在宅サービス(自宅で受けるサービス)

  • 訪問介護(ホームヘルプ):ヘルパーが自宅を訪問し、身体介護(入浴・排泄・食事の介助)や生活援助(掃除・洗濯・買い物)を行います
  • 訪問看護:看護師などが自宅を訪問し、医療的なケアや健康管理を行います
  • 通所介護(デイサービス):施設に通って、食事・入浴・機能訓練などのサービスを日帰りで受けます
  • 短期入所(ショートステイ):短期間だけ施設に入所し、介護サービスを受けます。介護する家族の休息(レスパイト)としても活用されます
  • 福祉用具のレンタル・購入:車いす・歩行器・介護ベッドなどをレンタルしたり、シャワーチェアなどの用具を購入したりする費用を補助します
  • 住宅改修費の支給:手すりの取り付けや段差解消など、自宅を介護しやすい環境に改修する費用を原則として1人あたり最大20万円まで補助します(要介護度が3段階以上上がった場合や転居した場合は再度対象となります)

施設サービス(施設に入所するサービス)

  • 特別養護老人ホーム(特養):原則として要介護3以上が対象(特例として要介護1・2でも入所できる場合があります)。長期入所が可能な公的施設で、費用が比較的低めです
  • 介護老人保健施設(老健):病院を退院した後、在宅復帰を目指すためのリハビリを中心とした施設です
  • 介護医療院:医療の必要性が高い要介護者が長期療養するための施設です

施設サービスを利用する場合、介護サービス費の1〜3割に加え、食費・居住費は原則として全額自己負担となります。低所得の方には「補足給付(特定入所者介護サービス費)」という制度があり、食費・居住費の負担を軽減できます。

自己負担が高くなっても安心「高額介護サービス費」制度

介護保険の自己負担割合は所得に応じて1割・2割・3割に分かれています。ただし、1か月の自己負担額が一定の上限を超えた場合は、超えた分が後から払い戻される「高額介護サービス費」という制度があります。

自己負担の上限額は所得区分によって異なります。代表的な区分は以下のとおりです。

所得区分の目安 月の上限額(個人)
生活保護受給者など 15,000円
住民税非課税世帯(低所得) 24,600円
住民税課税世帯(一般) 44,400円
現役並み所得者(高所得) 44,400円〜140,100円

たとえば、住民税課税世帯(一般的な所得水準)の方であれば、3割負担になっても月44,400円が上限となり、それ以上の負担はありません。初回は申請が必要ですが、その後は自動的に口座へ振り込まれます。「介護費用が高くて使えない」と諦める前に、この制度を確認してみましょう。

参考:厚生労働省「サービスにかかる利用料」(介護サービス情報公表システム)

知らないと損する4つのポイント

介護保険は「知っているかどうか」で、自己負担額やサービスの質に大きな差が出る制度です。特に次の4つは、事前に把握しておくと安心です。

①申請日にさかのぼって保険が適用される

要介護認定の効力は申請日にさかのぼって発生します。つまり、認定結果が出る前にサービスを利用した場合でも、後から保険が適用されます。ただし、最終的に「非該当(自立)」と判定された場合は全額自己負担となるため、申請と同時に地域包括支援センターへ相談しておくと安心です。「結果が出てから使おう」と待っていると、その期間の費用がすべて自費になる可能性があります。

②ケアプランの作成はプロに無料で任せられる

「どのサービスを組み合わせればいいかわからない」と自分で悩む必要はありません。ケアマネジャーにケアプランの作成を依頼すれば、状況に合った最適なサービス構成を提案してもらえます。しかもケアプラン作成の費用は全額介護保険でまかなわれ、利用者の自己負担はゼロです。

③高額介護サービス費で自己負担には上限がある

「2割・3割負担と言われたら高くて払えない」と感じる方も多いですが、月の自己負担には上限があり、超えた分は後から払い戻されます。「費用が心配だからサービスを控えよう」と判断する前に、自分の所得区分での上限額を確認することをおすすめします。

④住宅改修や福祉用具には補助が出る

手すりの設置や段差解消などの住宅改修は最大20万円、シャワーチェアや入浴用品などの福祉用具購入は年間最大10万円まで介護保険の補助対象です。自費で工事や購入をする前に、必ず介護保険の対象になるかどうか確認しましょう。

よくある失敗と防ぎ方

介護保険の現場では、「知らなかったことによる後悔」が数多く見られます。同じ失敗を防ぐために、よくあるケースを確認しておきましょう。

失敗① 申請が遅れて自己負担になった

「もう少し様子を見よう」と判断を先延ばしにした結果、その間の介護費用がすべて自己負担になるケースがあります。介護が必要だと感じたら、できるだけ早く申請することが重要です。申請してから認定まで1〜2か月かかることを念頭に、早めに動くことが大切です。

失敗② 家族だけで抱え込んでしまった

「まだ他人に頼むほどではない」と家族だけで介護を続け、精神的・体力的に限界を迎えてから相談するケースは少なくありません。デイサービスやショートステイは「家族が休める」ための制度でもあります。早い段階から利用することで、介護する側の負担を長期的に軽減できます。

失敗③ 認定調査で実態が正しく伝わらなかった

認定調査で本人が「できます」と答えてしまい、実際より軽い判定が出るケースがあります。普段の様子を把握している家族が同席し、「実際にはこれだけ手がかかっています」と具体的に伝えることが重要です。認定結果は使えるサービスの量に直結するため、正確に伝えることが大切です。

失敗④ 使えるサービスを知らずに利用していなかった

デイサービス・ショートステイ・福祉用具レンタルなど、知らないまま使わずにいるケースは多いです。認定を受けたら、ケアマネジャーに「どんなサービスが使えるか」を積極的に聞いてみましょう。本来受けられる支援を使わないことは、制度上のもったいないです。

よくある質問

Q. 介護保険はいつから使えますか?

要介護認定を申請した日にさかのぼって効力が発生します。そのため、介護が必要になったと感じたらなるべく早く申請することが重要です。申請から認定まで通常1か月程度かかるため、急ぎの場合は申請と同時に地域包括支援センターへ相談しましょう。

Q. まだ元気なうちに申請できますか?

申請自体はできますが、「介護や支援が必要な状態」と認定されなければサービスは利用できません(「非該当(自立)」となる可能性が高いです)。元気なうちは、地域包括支援センターへの相談や、介護予防のための通所事業を活用することができます。65歳になったら、まず地域包括支援センターの場所と連絡先を確認しておくだけでも、いざというときの備えになります。

Q. 地域包括支援センターとはどこにありますか?

地域包括支援センターは、市区町村が設置する高齢者の総合相談窓口です。介護・医療・保健・福祉に関するさまざまな相談に無料で対応しています。場所は市区町村の公式ウェブサイトか、厚生労働省の「介護サービス情報公表システム」から検索できます。「どこに相談すればいいかわからない」というときの最初の窓口として気軽に利用できます。

Q. 一人暮らしの場合、誰が申請手続きをしますか?

一人暮らしで本人が申請に行けない場合でも、地域包括支援センターや居宅介護支援事業所のケアマネジャーが申請を代行してくれます。遠方に住む家族が代わりに手続きをすることも可能です。まずは地域包括支援センターに電話で相談するのが最もスムーズです。

まとめ:今のうちに「知っておく」だけで十分

介護保険は、実際に介護が必要になってから初めて動き出す制度です。しかし、申請の流れや使えるサービスの種類を知っておくだけで、いざというときの対応が大きく変わります。

介護保険料を長年払い続けながら、仕組みをよく知らないままでいた自分を振り返ると、もっと早く整理しておけばよかったと思います。今すぐ申請が必要なわけではなくても、「地域包括支援センターの場所を確認する」「65歳になったら被保険者証を確認する」という小さな一歩が、いざというときの安心につながります。

まずは、お住まいの地域の地域包括支援センターを検索してみることから始めてみてください。